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俺はゾロが好きだ。

でもこの気持ちは、絶対伝えることはないと思う。

 

 

 

俺がゾロに魅せられたのは、鷹の目との戦闘の時。

決して逃げることなく、己の野望の為に真っ直ぐ向かっていくその姿に、心を奪われた。

 

仲間になり、同じ船に乗るようになって『海賊狩り』としてではなく、『1人の男』としてのゾロを見た。

暇があれば寝るか鍛えるか。

ぶっきらぼうだし、あまり自ら関わろうとはしていなかった。

 

でも、ふとした瞬間に笑顔を見せる。

ルフィに話しかけられた時に見せる、優しい笑顔。

ナミさんに頼まれ事をした時に見せる、思いやりのある笑顔。

ウソップの話す嘘を聞いている時に見せる、楽しそうな笑顔。

俺にとって、どれも惹かれる笑顔だった。

 

俺に向けられた笑顔は、どこにもないけど。

それでも『ロロノア・ゾロ』という1人の男が、俺はとても好きだった。

 

 

 

「おい、酒」

キッチンで後片付けをしていたら、ゾロが酒を取りに来る。

毎日きっかり同じ時間に。

「そこにあるだろ、好きなの持ってけ」

「あー」

いつもはゾロが酒を飲んでいるのを、そっと見ているだけだったが、今日は少し違うことをしてみた。

「ほい」

「ん?なんだこれ」

「酒のつまみ。クソうめぇから」

ゾロは少し驚きながらも、俺の作ったつまみを食べ始めた。

「…うまいな」

 

あ、今ゾロの口角が少し上がった…

喜んでくれたのか…?

「当然だ。俺が作ったんだぜ」

「ごちそうさま」

「おぅ」

「なぁ、また作ってくれよ」

ゾロにそう言われ、俺は顔を上げる。

すると、ゾロが笑顔でこちらを見ていた。

俺は咄嗟に顔を下げる。

 

なんてことしてくれるんだ…!

だって、心臓がドクドクいってるんだぜ?

顔もあっつい。

きっと今、俺の顔真っ赤だ…。

 

「コック?」

「なななななんでもねぇ、い…いつでも作ってやるよ!」

「おぅ、頼んだぜ」

そう言って、ゾロはキッチンを出た。

それからしばらく、俺はそこから動けなかった。

 

 

 

メリー号は、ある島に着いた。

ルフィはさっさと冒険に飛び出し、ナミさんはショッピング、ウソップは道具を探しに行った。

俺も買い出しの為に船を降りそうとしたら、船番のゾロに声をかけられた。

「おいコック!」

「あ?なんだ?」

「今日もまた作ってくれよ!」

「あ?なにをだよ」

「つまみー!」

「あ…」

 

なんだこれ、自然と顔がニヤケちまう…!

「おぅ分かった!楽しみに待ってな!」

 

 

 

「うし、これで全部だな」

俺は買い出しを終えて、海の見える公園で休憩していた。

ここからはメリー号が小さく見える。

ゾロが俺のつまみを待っていると思うと、今すぐにでも戻りたい気もするが、自分の気持ちを抑えきれるか不安で…

どうしたもんかと考えていた。

 

 

 

しばらく時間がたった頃、男女が揃って公園に入ってきた。

その2人を見ていたら、男の人が女の人に花束を差し出し、何か言っている。

それを聞いた女の人は頬を染めて、その花束を受け取り、幸せそうな顔で笑った。

それから2人は手を繋ぎ、微笑み合いながら歩いていった。

 

あの2人、綺麗だったな。

俺もゾロと一緒になれたら…

 

でも、絶対口には出せない。

ゾロの野望への道を邪魔したくないから。

 

 

 

メリー号への帰り道、俺はある花屋の前で立ち止まった。

花屋の中にはたくさんの花束も飾られている。

「あ」

花束の中で1つ、心を奪われたものがあった。

それは緑と青の花の花束。

小さな緑と青の花が、とても綺麗に重なっている。

「それ、気になりましたか?」

花屋の人が、俺に声をかけてくれる。

「はい。とても綺麗ですね」

「ふふ。ありがとうございます。その花束にはある願いが込められているのですが、ご存知ですか?」

「ある願い?」

「直接は言えないけど、気持ちを伝えたい。そんな人が相手にこの花束を渡せば、気持ちが伝わり幸せになれるようにと、願いが込められている花束なんです」

「そうなんだ…」

「あなたも、誰か大切な方がいるのですね?」

「俺は…」

 

ゾロ…

直接は言えなくても、花束渡すくらいは許してくれるか?

「その花束頂けますか」

「はい、ありがとうございます」

俺は花束を受け取ると、真っ直ぐにメリー号へと向かった。

 

 

 

メリー号に着くと、ゾロの姿は見えなかった。

「あいつどこだ?」

とりあえずキッチンへ向かうと、そこにゾロがいた。

「うぉっ!?びっくりした…てめぇなんでここにいるんだよ」

すると、ゾロはきょとんとしながら答える。

「あぁ?てめぇのつまみが食いてぇんだよ!」

「え…」

「待ちくたびれたんだぜ…」

「お、おぅ!」

俺はそっと花束を隠すと、満面の笑みを浮かべてゾロに顔を向ける。

「この前より、更にクソうめぇもん食わしてやるよ!」

 

 

 

「ごちそうさま」

「おぅ、お粗末様」

ゾロは俺の料理を「うまい」と言いながら食べてくれた。

すごく嬉しかった。

 

この雰囲気なら、渡してもいいよな。

 

キッチンで酒を飲もうとするゾロを、俺は止める。

「なぁゾロ、今日は甲板出て酒飲もうぜ?」

 

 

 

俺の提案を受け、ゾロと2人で甲板へ出た。

そっと、さっきの花束を持って。

船の縁に寄りかかり、海を見ながら隣に並ぶ。

 

よし、頑張れ俺。

 

「ゾロ」

「ん?」

「誰かに好きって言われたらさ、お前どうする?」

「さぁな」

「やっぱり野望への道の邪魔だと思うのか?」

「どうだか。俺が邪魔だと思えば邪魔だし、邪魔じゃないと思えば邪魔じゃねぇんだと思うが」

「なるほど。お前らしいな」

「急になんなんだよ」

 

すっ。

 

俺はゾロにあの花束を差し出す。

「ん?なんだ?」

「やるよ」

「あ?なんでだよ」

「なんでもねぇよ」

 

これくらい許せ、ゾロ。

お前の邪魔はしねぇよ。

 

悔いはない。

俺はゾロに背を向けながら歩き出そうとすると、ふと背中に暖かいものを感じた。

視界には、大きな逞しい腕。

俺の体温が一気に上昇する。

「ゾッ…ゾロ!」

「なんだ?」

「い…いやこれ!」

「悪い、もう我慢出来ねぇ」

「なに…」

ゾロの声が、俺のすぐ耳元で聞こえる。

ゾロに後ろから抱き込まれた俺は、今の状況に驚きを隠せない。

「1回しか言わないから、よく聞けクソコック」

 

ゾロ…?

「俺はてめぇに惚れてる。今までは隠してきたが、この花束で伝える気が沸いた。てめぇも俺と同じ気持ちでいたんだろ?」

「なんで…お前知ってたのか!?」

「いや、知らなかったぜ。この花束を受け取るまでな。でも花束差し出された時、てめぇの気持ちが分かった」

「うそ…」

「ほんとだ」

「でも!俺、ゾロの邪魔したくねぇよ…」

「あ?さっきも言ったろ。俺が邪魔だと思わなければ、邪魔にはならねぇって。で、てめぇは邪魔だと思わねぇ」

「…」

「むしろ、てめぇには側にいて貰いてぇよ…」

俺はゾロの瞳を覗いた。

とても綺麗な琥珀の色が、全て事実だと伝えてくる。

「そっか…!」

「おぅ」

「ゾロ…!」

「ん?」

「…好きだ…」

「おぅ、俺もだ」

俺の唇は、そっとゾロにふさがれた。

俺を抱き締めてくれるゾロの背中に、俺も腕を回す。

 

ゾロ、大好きだ。

あの花束買ってよかったな。

ほんとに気持ちが伝わった。

 

緑と青の花束。

くくっ。

なんか俺とゾロみたいだな。

 

 

 

俺達はそっと、微笑み合った。

 

 

 

END

ツイッターでのリプ来た人のイラストに小説を付けさせていただくという企画のものです!

私が描いたLINEスタンプの花束サンジくんのイラストをもとに、佐伯さんが素敵なSSを付けて下さいました(〃∀〃)

 

片思いサンジくん(ゾロでも)ほんと胸がきゅーんとしますよね…そして応援したくなります。

自分の思いを伝えられず悶々とするサンジ、そして相手の態度が態度だから尚更…分かる、分かるよサンジくん!!

そしていつも自分に対して邪険なゾロが笑顔になってくれた、喜んでくれたとサンジくんが嬉しくなるとこっちも嬉しくなりますよ!!

でも結局両想いだったんですけどね!!wそう、それでこそゾロサンだ。(誰

 

ゾロのさ、「てめぇは野望を叶えるのに邪魔だとは思わねえ、むしろそばにいてほしい」ってセリフがほんとにジーンときたよ。

ゾロの夢にはサンジが、サンジの夢にはゾロがいないとダメなんだなあ。お互いそんな存在になってしまってるんですよねゾロサンは!!!

イカン、485とか思いだしてしまうよ…

 

何より、ゾサカラーの緑と青の花で愛を伝えるなんて…感動的!!モノクロシャーペン絵で本当に申し訳ない位です…(つд`)

 

 

最後に改めて、私の拙い絵にこんなに愛情いっぱいのお話を付けて下さった佐伯蓮さん、本当にありがとうございました!!

 

 

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